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 基礎技術テーマ:モデリング講座その7
 キャラクターのモデリング・3 リアルな人間の顔をモデリングする (記事記載:2007年6月22日)
 
 過去2回に渡って、簡単な物から少し複雑なキャラクター・モデリングに移行してきました。
 今回は、モデリングの中でも、かなり難しい部類に入る"リアルな人間の顔"のモデリングにチャレンジしましょう。
 敢えて"リアルな"と書いたのは、今流行りの"美少女キャラクター"のような人間のモデリングに挑む訳ではないからです。
 実際、コミックやアニメなどの美少女キャラは、目が異常に大きかったりする一方、鼻や口が異常に小さかったりします。
 そう言ったキャラクターは、色んな意味で表現の許容範囲が広いです。一方、リアルな人間の顔のモデリングとなるとはそうはいきません。
 リアルな人間の顔のモデリングは、最も難しいモデリングの一つと言えるでしょう。
 例えば、生きている恐竜は実際には誰も見ていませんから、正しいとか正しくないとかは、なかなか指摘できません。
 しかし、人間の顔は誰もが"毎日"見ていますから、モデリングがどこか"少し"でもおかしいと、その造型が奇妙に感じられてしまいます。
 つまりそれだけ"リアルな人間の顔"は難しいのです。そんな人間の顔にチャレンジする事は、かなりの技術の向上にもつながります。
 
 
 
 ①このモデリング講座で何度か述べていますが、モデリング技術の基本は、モデリングの"対象"を良く観察し、理解する事です。
  ところで、
人間の顔をモデリングする時、骨格や筋肉の流れを意識することが大切です。
  ただし、骨格や筋肉は外から見えるものではないので、図書館に行ったり(もちろん買っても良いですが)専門書等を調べましょう。
  また、人の顔は(民族や人種による違いや若干の個体差はありますが)、
目や口や鼻や耳の大きさや比率や位置はほぼ決まっています。
  顔の法則を知らないと、目や口や鼻のパーツをいくら美しく作っても、全体としてバランスの取れていない顔になるかもれません。
  美術大学の学生は日頃からそう言う訓練をしているのでしょうが、私は美大出身ではないので独自に勉強を続けています。
  解剖図や人体の専門書等を読み、スケッチし、溜まったスケッチを綴じて数冊のファイルにしています。上記画像はその一部です。
  (※ここでは敢えて、顔のパーツの比率や大きさ、各間の距離などについての記事の転載はしませんので、各自調べて見てください)。
  美大生でなくとも勉強は自分でできるので、その努力は惜しまないようにしましょう。観察して知る事は、モデリングの第一歩です。
 
 
 
 ②今回は、リアルな人間の顔を目指していますので、頭蓋骨をガイドに背景において顔をモデリングしていくことにしましょう。
  (※私が使っているソフトには頭蓋骨のオブジェクトが入ってますが、無い場合は資料を探して背景のガイドにしても良いでしょう)。
 
 
 
 ③モデリングのアプローチには色んな方法がある事は、この講座を通じて何度も述べています。
  前回は、一つのボックスからキャラクターを作りましたが、今回は顔のパーツ毎に、個別に作っていきましょう。
  まず、目の周辺からモデリングしていきましょう。目のベースとなる八~十角形の図形を描きます(右図)。
  そのベースを
ベベルツール等で押し込んでいきます(左図)。
 
 
 
 ④ベベル処理を繰り返したら、目の周りの形になるよう詳細の詰めに入ります。特に、眼球との境目は細かくポリゴンを配置します(左図)。
  
背景の頭蓋骨に合致するよう、丁寧にポリゴンを移動していきます。(⑪のところで作る)眼球が、皮膚から飛び出ないよう気をつけましょう。
  必要に応じて、
バンドソーやナイフツール等でポリゴンを増やします。形を整えた後にサブパッチ化したのが、右の図です。
  左側は、ミラーコピーします(※以下、逐一のべませんが、耳や口なども同様に一つないし片側を作ってミラーコピーします)。

 
 
 ⑤次は、口をモデリングしましょう。口周辺のベースとなる形を、
多角形ツールやフリーハンドで描きます(左図)。
  それを
ベベルツール等で、押し出したり、押し込んだりします。口の内部は、奥に押し込みます(右図)。
  唇と口の中は、サーフェス名も変えましょう
 
 
 
 ⑥口の形に近づけるように、
丁寧にポイントを移動していきます(左図)。唇と口の奥の境目は、角度に気をつけましょう
  必要に応じて、
バンドソーなどでポリゴンを増やします。形を整えて、サブパッチ化したのが、右の図です。
 
 
 
 ⑦次は、鼻です。鼻は、ボックスからモデリングしてみましょう。左図のような、正面が3分割されたボックスを一つ作ります。
  鼻の穴部分のポリゴンを選択し、
ベベル処理等で鼻の穴を作ります。サブパッチ化して、鼻の形になるようポイントを移動します(中央図)。
  必要に応じて、
細分化、ナイフツール、バンドソーツール等によって、ポリゴンを増やします。
  ポイントを移動して、小鼻部分などの形を整え、鼻の形を整えていきます(右図)。
 
 
 
 ⑧顔のパーツで、最も難しいのが耳かもしれません。耳は、個体差がたいへん著しいパーツの一つです。
  「こうすれば簡単に作れる」みたいな秘伝はありません。ちまちまとポイントを動かしつつ、試行錯誤してみてください。
  まず、
多角形作成ツールかフリーハンドで、耳のベースを作りましょう(左図)。
 
 
 
 ⑨
耳のベースの形を押し出して、厚みをつけます(左図)。
  外耳の形を作るため、
ベベルツールなどで押し出したり、押し込んだりします(中央図)。
  耳の穴(内耳)の部分のポリゴンを選択して、
押し込みます(右図)。
 
 
 
 ⑩ここから根性と気合の作業です。耳の形は複雑なので、
ポイントを納得いくまで、ちまちまと移動します(左図)。
  整った外耳をサブパッチ化したのが、右の図です。時間が許せば、もっと複雑な形状にも挑んでみたいところです。
 
 
 
 ⑪眼球を作りましょう。眼球は単なる球体だと思われるかもしれませんが、実は違います。
虹彩の部分が膨らんでいます(上図参照)。
  (※ちなみに上の眼球は、マッピング処理でディテールを付け加えていますが、今回のTIPSの主旨では無いので省きます)。
  また、眼球の大きさですが、手元の人体の資料によると、
成人であれば眼球の直径はだいたい2.5cmほどです(・・・意外と小さい)。
  「目が大きい」とか「目が細い」等と言うのは、顔の大きさや周辺の皮膚に対する相対的なものであって、眼球の大きさはほぼ同じです。
 
 
 
 ⑫さて、作成したパーツの口や鼻や目の周辺の
ポリゴンをつないでいきます(左図)。ポリゴンをつなぐ際は、筋肉の流れを意識しましょう。
  頭蓋骨をベースにモデリングしていますので、当然、頭蓋骨にぴったり合っています(中央図)。
  こうして、すべてのパーツをつなげた顔が右の図です。科学的には正しい形かもしれませんが、美しくないですね・・・(笑)。
  しかし、これらの人間の顔を作る手順は、確実にモデリング技術の向上につながるはずです。一通り試す価値は、十分にあります。
 
 
 
 ⑬さて、頭蓋骨に沿ったモデリングの顔があまりに美しくないので、上記のモデリング技術を駆使しながら、別の顔をモデリングしました。
  それが、上の図です。皆さんも色んな顔写真を集めて、自分の好きな顔のモデリングにチャレンジしてみましょう。
 
 
 
 ⑭さて、モデリングした⑬の顔オブジェクトに、皮膚や唇や眉等の顔のマッピング画像を貼り付け、
  ファー(髪の毛)とまつ毛のオブジェクトを加えて、ライティングを施し、レンダリングしたのが上の画像です。
  ※今回は突貫作業でしたので、モデリング、マッピング、髪や生え際の処理などが雑です。
   そのうち時間ができたら、もっと時間をかけた顔のCGをUPしたいと思います。

  (※今回のTIPSの主旨は、マッピングやライティングやファーではないので別の機会に述べたいと思います)
 
 
 
 ⑮さて、一つの顔のデータを作っておくと、色々と流用・転用も可能です。
  オブジェクトに、モデリングでちょっと手を加えてみましょう。
  皺や弛みを作り、目付きを悪くし、口を曲げ、皺の多い顔画像をマッピングしただけで、右図の様なまったく別人の顔になります。
 
 以上、人間の顔のモデリングのTIPSでした。顔のモデリングは本当に難しいので、日々技術と表現の向上に励む事が重要です。

 

 追記:このページの女性CGは突貫作業ですので、マッピングデータや髪や生え際周り等がかなり雑です。
    より丁寧に作成し、モデリングや髪の毛やマッピングデータに、それなりに時間をかけたのが、下の赤ちゃんのCGです。
 
 
 

 追記:僕も日々色んな事を試しながら、様々な顔のモデリングのトレーニングをしています。