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 基礎技術テーマ:ライティング技法 2/応用編   (記事記載:2008年6月15日)
 
 前回のライティングの基本に引き続き、ライティングについて学んでいきましょう。
 
 
①ライトの種類
 
 
1.平行ライト(無限光源)
 
 
 平行ライト(ないし無限光源)は、太陽のライトを模した方向性のある光量の減衰しない光源です。
 (※実際は太陽光も距離と共に減衰して行く訳ですが、地球上のわずかな距離の範囲内ではその減衰率は無視できると仮定しています)。
 無限光源の光量は減衰せず、スポットライトのように光は広がらずに平行に移行し、落ちる影も平行で影のエッジもくっきりするのが特徴です。
 一般的に、CGで最も使用率の高いライトでしょう。
 
 
2.スポットライト
 
 
 スポットライトは、(説明するまでもないかもしれませんが)円すい状(コーン状)にライティングする方法です。
 最も分かり易い例は、劇場で歌手に当てられるライトです。方向性と範囲を持ち、ライティングされる範囲の外は暗くなります。
 また影のエッジは、無限光源の影と比較し、柔らかくボヤッとする傾向があります。
 野外シーンより、室内や夜間の路地裏のような限定範囲のシーンで使われる例が多いでしょう。
 
 
3.点ライト
 
 
 点ライトは、平行ライトやスポットライトのように方向性を持ちません。
 面積をもたない一点から、360度全ての方向に光を放ちます。
 電球やろうそくの火などに使用される、これもCGでの使用例の多いライトです。
 
 
4.線ライト&面ライト
 
 
 線ライトや面ライトは、特殊なライトです。
 点ライトが一点から光を放つのに対し、線ライトはその線から、面ライトはその面全体から光を放ちます。
 使用例としては、蛍光灯やフロアーライトなどが上げられるでしょう。
 しかし線ライトや面ライトは、計算にかなり多くの時間が必要なので、その使用には熟考が必要です。
 使われる頻度は、そう多くは無いライトでしょう。
 

 
 
②ライトの効果
 
 CGのライトの種類を述べましたが、それぞれのライトには様々な効果を適用する事ができます。
 例えば、スターフィルタ効果、レンズフレア効果等々…色々な効果があります。
 効果は数多いのですべては述べられませんが、どんな効果があるのかそれぞれのCGソフトのマニュアルをチェックしてください。
 ただしこれらの効果は、頻繁に使いすぎるとその印象が薄くなりますので、使用ヶ所を厳選した方が良いかもしれません。
 下記に、ライトにレンズフレア、スターフィルター(光筋)、グロー、光輪、ボリューメトリック等の効果を適用した画像を例示します。
 
  
 
 
 
③レイトレーシングとラジオシティについて
 
 
レイトレーシングやラジオシティは、厳密にはレンダリング(画像生成計算)の技法に関する事です。
 なので、ここで取り上げるのは少々筋違いなのですが、レンダリング方法によってライトの効果が大きく変わりますので一応取り上げます。
 一般にCGでリアルな画像を得ようと思ったら、レイトレーシング技法を用います。
 
レイトレースとは、その名の通り光線(レイ)を追跡(トレース)する事です。光の行路を追う事で、よりリアルな画像を計算する方法です。
 線だけを表示するワイヤーシェードや、面だけを表示するフラットシェィドとは比較にならないリアルな画像を得られます。
 
ラジオシティとは、熱力学による熱源の伝導や反射を光源に置き換えた計算方法です。光は、物体に当たってそこで終わりではありません。
 実際には、光は物体に当たって反射し、他のオブジェクトを照らします。ラジオシティは、それを追って計算していく複雑な計算方法です。
 レンダリング技法によるライティング効果の違いを、分かり易く比較するため3枚の画像を並べてみましょう。
 
(※以前作った家屋オブジェクトのキッチン付近を、光の微妙な夕刻の設定で、今回の比較用にレンダリングしてみたものです)。
 
 
 
 左の画像(A)は、最も簡易な
レイトレース画像です。
 中央の画像(B)は、
影、反射、(ガラスの)透明度や屈折率等を適用したレイトレース画像です。
 そして右側の画像(C)が、
モンテカルロ方式のラジオシティレンダリング画像です。
 右へ移行するほどにリアリティが増している事が分かると思います。
 特に、ラジオシティ画像(C)は、光の反射や拡散がより柔らかにリアルになっているのが分かると思います(特に壁や天井を注視してください)。
 縮小&圧縮したjpeg画像なのでちょっと分かりにくいかもしれませんが、右側画像(A)と左側の画像(C)のクオリティには雲泥の差があります。
 しかし右から左に移行していくに従い(つまりクオリティが上がるに従い)、残念ながら
計算時間もどんどん伸びていきます。
 実際のところ、(静止画ならともかく)
ラジオシティ・レンダリングを長尺のCGアニメに使用するのは、個人制作では難しいでしょう。
 しっかりしたレンダリング・ファーム(何台もの高速コンピュータ)を持ち、大きなバジェット(予算)とスケジュール(時間)があれば話は別ですが。
 ここでは、(同じライティングであっても)レンダリング方法によって、得られる画像の質が大きく変わることは覚えておきましょう。
 
 
ラジオシティレンダリングによって作成した室内のCG画像の実例
 
 
 余談ですが、多くの場合、時間的にラジオシティ使用は難しいため、私も擬似的に色んな方法を試します。下の方法もその一つです。
 私はリアルなライティングの時間を節約するために、360度に複数のライトを配置してシーンを構築する事が時折あります。
 これは周囲の環境光を均一にしないためで、一つ一つのライトの光量は少なく、かつ微妙に設定を変えます。機会があったら試してね。
 
←360度(up&down)ライティングの一例
 
 ④HDRIを使用したグローバルイルミネーションについて
 
 最後に、HDRIを利用したグローバルイルミネーションについても軽く触れておきましょう。
 これは、ライティングの中でもかなり特殊な技法ですが、劇的に画像のクオリティが上がります。
 HDR画像の明るさの情報を使ってレンダリングする方法で、一般的にラジオシティ・レンダリングと併用されます。
 初めに、
HDRI(=ハイ・ダイナミック・レンジ・イメージ)について説明しておきましょう。
 通常のJPEGなどの24bit画像は、RGBそれぞれに8bit(256階調)の色情報を持っています。
 しかし、現実の光はもっと広がりを持っています。24bit表示のPC画面では白は(255,255,255)の段階で示されますが、
 RAWデータは、RGBそれぞれにもっと豊富な諧調(12bitや14bit)をもっております。
 (8bit⇒256諧調/12bit⇒4,096諧調/14bit⇒16,384諧調)。
 PCは24bit(RGB各8bit)の1,677万色表示なので、残念ながらそれを目で確認することはできません。
 「実際にどう言う写真なのか?」を確認するために、PCやカメラのプログラムの解釈でJPEG等に現像する訳です。
 現像したJPEG等の画像データはPCで目視(確認)できる訳ですが、大幅にデータを失った状態となっているのです。
 なのでRAWデータをRGB各8bitのJPEG化することはできても、逆にJPEG画僧をRAWデータに変換することはできません。
 そのRAWデータをPCなどで加工して一つに納めたのが、32bitHDRI…と言ったところです。
 具体的にHDR画像の作成方法を見てみましょう(※ただしHDRIを扱える画像処理&ペイントソフトが必要です)。
 
同じポジションで、露光を変えて撮影した、複数の画像データ(RAWデータ等)が必要です(※最低3枚は必要)。
 下記に、私が同位置で撮影した3枚を例示しました(※ここではjpegに圧縮して例示していますので念のため)。
 
 
 
 これらの画像を、画像処理ソフトの機能を用いて(※私はフォトショップとアドビブリッジを使用)、HDR画像として一枚にまとめます。
 それが下の画像です(※これも例示のためのjpeg圧縮画像です)。
 
 
 
 
HDR画像は、一件何の変哲も無い普通の画像に見えますが、この一枚に幅広い階調のカラーデータが含まれているわけです。
 
この32bit-HDR画像を光源として利用して通常のライトは"一つも使用せず"、ラジオシティでレンダリングしたのが下の画像です。
 
 
 
 複雑なライティングを"一つも"設定していないのに、驚くべきリアリティと柔らかな影を持った画像が作成できました。これが最大の長所です。
 一方、欠点は思った通りのライティング構築が難しい点と、HDR画像は同位置で露光を変えて撮影するので、動く背景は撮影不可能の点です。 
 
 以上、2回に渡ったライティングについてのTIPSは、これで取りあえずおしまいです。
 実際の映像でもCGでもライティングはとても難しい技術の一つですから、地道に勉強と経験を重ねていってくださいませ。
 
 
2013年 3月 8日追記:HDRIのライティングだけを使用してラジオシティレンダリングでCGアニメを制作しました。
 雅工房のオリジナルキャラクターのロボットのミヤビー。誕生したばかりのミヤビーが見た詩的な世界です。
 →こちらよりご覧下さい。
 

 

 2010年1月8日追記:
 
ラジオシティレンダリングによるフルハイビジョンCGアニメ"ツァー・オブ・エルサレム"を作成いたしました。
 (※下記の画像はラジオシティでレンダリングした古代エルサレム神殿の再現CG/本画像はHDを縮小した画像)。
 
 
全1890フレームで、"1フレームあたり平均15分"と言う膨大なレンダリング時間がかかりました(※全フレームで約470時間=約3週間)。
 
→興味のある方は、こちらよりご覧くださいませ。
 

 2010年9月9日追記:コースティクス効果/ワインボトルのCG
 ガラスを通して反射した光が地面を照らす
"コースティクス効果"の実例"ワインボトル"のCGをUPします。