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様々なデジタルデータの変換について   (記事記載:2018年 2月20日)

 時代が進むと、色んな物が細分化されていきます。かつて「巨人・大砲・玉子焼き」と言われていた画一的嗜好傾向は、昭和後期~平成にはどんどん細分化され、お互いの趣味や好みはバラバラに・・・例えばスポーツ趣味は、野球一辺倒から、サッカー、自転車、登山、パラグライダー、カヌー、エトセトラと広がりました。ビジネスの分野では、よりそれが顕著になっています。ビジネスでは利権が絡むので、自分のところの手がけたオリジナルフォーマットを主流にして稼ぎたいので、ハードもソフトの各社独自仕様が乱立する訳です。とりわけデジタル世界のCADやCGのフォーマットやビデオフォーマットは奇々怪々で、存在します。今回は、その辺り事を取り上げます。


1.3DCADデータや3DCGデータのコンバート

 CADデータとCGデータの変換について取り上げます。よく勘違いされるのですが、「CADもCGも同じデジタルのモデリング・データなんだから、互換性あるんでしょ?」と言う一般の認識です。結論から言うと、CADとCGはネイティブな互換性がありません。無理矢理例えるならば、アボリジニの言葉を日本語に翻訳するようなものです・・・普通の日本人にはできません。
 CADデータをCGデータに持ってくるには、通常、
IGESファイル(転送用の中間ファイル形式)やSTEP形式(こちらも中間ファイル形式の一つ)などの中間ファイルや、またはOBJファイル(Wavefront社の作ったObject形式)、FBXファイル(AutoDesk社の所有する形式)等を介して、CADとCG間のデータのやり取りをします。先ほどの例で言うと、アボリジニの言葉(A)を現地のオーストラリア人が英語(B)に訳して、それを日本語(C)に更に訳すような感じでしょうか?その「A」と「C」の中間を取り次ぐ「B」が、OBJやFBXなどの中間ファイルです。
 「アボリジニの言葉」⇒「英語」⇒「日本語」と訳を繰り返すうちに、言葉が本来持っていた意味が薄れたり変わってしまうように、モデリングデータもA⇒B⇒Cと変換を繰り返すことで色々と問題が生じます。サイズが極端に違ったり、一部のポリゴンが裏返ったり、モデリングデータが破損したり、色やマッピングのデータが引き継がれていなかったりするので、CGソフト側でモデリングデータの修繕は間違いなく必要になります。コンバータープラグインもここ10年で進歩したとは言え、
今まで変換されたデータを無修正で使えた事は、ただの一度もありません。全部、修正しています。
 私の経験上、最も困る変換問題は、変換後の大きすぎるポリゴン数です。CGでは数万ポリゴンから数十万ポリゴンもあれば十分なモデリングも、CADデータから変換すると200万ポリゴンとか、時には500万ポリゴンを超えたりします。CADデータを変換する際に、馬鹿正直に(画面ではほぼ認識できないような)ネジ一本を再現するのに数百ポリゴンとかを使ってしまうのです。数ポリゴンで済むようなほぼ平面の曲面に、百以上ものポリゴンを割いたりします。これが、たいへん困った点です。500万ポリゴンだと、もうそれだけでスペック的に高速のワークステーションPCでもアニメーション設定が困難です。RAMをたっぷりと積み6個のCPUを搭載した高速のヘキサマシンでも、フリーズしたかのようにPCの動きは鈍ります。なので、ポリゴン数を減らす作業が必要です。自動でポリゴン除去(リダクション)を行うと外観はメタメタに崩れてしまってとても実使用に堪え得ないので、丁寧な手作業の修正・修繕が必要です。ビッグデータですと、この作業に1週間かかることもあります。
 CADデータの変換にはかなり苦労しますし、以前はCADデータの変換に対してお金を払って業者に依頼することも多かったです(変換していただいても結局こちらで修正するのですが)。結論から言うと、上記の動画フォーマットの変換と同様、1種類のソフトで全てのCADフォーマットに対応するのは不可能です。やはり、様々なソフトウエアを駆使することとなります。色んなソフトを買うと、当然それなりの出費を覚悟しなければなりません。全てのフォーマットの変換に対応できる業者も、1社も存在しません。
 年間、わずか数度あるかないかのCADデータの変換に百万円を超えるようなソフトウエアは現実的でないので、高価なソフトはこのページでは省きます。また世には色んな3DCGソフトがありますが、使ったことのないソフトについては憶測でしか書けませんので(どこかの記事の丸写しになってしまうので)省きます。過去
私が実際に使用したソフトウエアに限定して、主なファイル形式のカバー範囲を見ることとします。CADデータからのCGデータへの変換だけでなく、CGデータからCGデータへの変換も併せて書きます。尚、責任ある業務で使用するので、危険を避けるべくフリーのソフトウエアはこのページではやはり割愛します。

★ライノセロス
 CADデータとCGデータの変換の王様と言えば、McNeel社の
ライノセロスでしょうか。私も以前ライノセロスを期間限定で試用したことがありますが、CADデータとCGデータのカバー範囲がとにかく広くて助かりました。持っていれば安心なソフトではありますが、このソフトをCADのモデリングソフトとしてメインに使う人ならともかく、他にも買うべきソフトやハードが山積みですので、使うかどうかも分からない、もしくは年に数回程度コンバーターとしてしか使用しないのであれば、商用版14万円は決して安くはないのでそこが悩みどころではあります。欲しいとは思っています(※ちなみに私は期限が切れたので今は使っていません)。



★3Ds-Max
 CG屋にとって比較的とっつきやすいのが、AutoDesk社の
3Ds-Maxでしょうか。当工房も先月1月に2度目のライセンス延長契約を行いました。私自身はメイン3DCGソフトがLightWave3Dなので、3DCG制作に3DsMaxを使用する訳ではないので、必要に応じて必要な月数分だけ契約できるので助かります。ライノセロスのようにCADに特化している訳ではありませんが、CATIA、IGES、STEPなどのポイントとなる形式をおさえているので、CADデータからのCGデータへの受け渡しにはかなり使えるソフトの一つではあります。
主なインポート対応ファイル
SAT、WIRE、APF、
CATIA4、CATIA5、
DXF、FBX、IGES、FLT、
SAT、SLDPRT、
STEP、OBJ など
主なエクスポート対応ファイル
WIRE、DXF、DWF、
FBX、IGES、FLT、
SAT、OBJ など

★LightWave3D

 NewTek社のLightWave3D。私が25年以上に渡り、メインの3DCGソフトとして使用しているソフトウエア。主に、OBJやFBXファイルを介して、CADデータの受け渡しを行えます。CGデータに変換したCADデータの修繕は、全てこのライトウエーヴ3Dで行っています。モデリング機能に関しては、間違いなく一日の長があります。
主なインポート対応ファイル
OBJ、DXF、3DS、
COLLADA(DAE)、
FBX、STL、PLY など
主なエクスポート対応ファイル
OBJ、DXF、3Ds、
COLLADA(DAE)、FBX、
STL、PLY、VRML など

★Shade3D

 イーフロンティア社の国産CGソフトと言えばShade。純国産の3DCGソフトウエアですが、残念ながら(笑)、私はこれを主にモデリング素材集データのコンバータとして使っていました。10年以上前の時点では、Shadeは優れたCGデータコンバーターの機能を有していたと思います。
 当工房のバージョンは8で止まっていますが、現在のShade3Dの最新バージョンは、低価格(※最上位のプロバージョンでも税込み97,200円!)の割には、それなりに幅広いフォーマットに対応しています。
 IGESの読み込みや書き出しなどに対応していることから、一部のCADデータの受け渡しに対応可能なのは頑張っていると思います。
 (※下記の表はShade3D最新版Ver.17のもの)
主なインポート対応ファイル
※全グレード共通
STL、FBX、DXF、
OBJ,SKP など
※スタンダード&Pro版
IGES
※Pro版
3DS、LWO,BVH、
COLLADA
主なエクスポート対応ファイル
※全グレード共通
STL、FBX、DXF、
COLLADA など
※スタンダード&Pro版
IGES
※Pro版
3Ds、LWO など

★Poser

 同じくイーフロンティア社のPoser。購入後ごく稀にしか使用していませんでしたが、お客様からの必要に迫られてデータ変換用に一度だけ使用しました。3DCGソフトとの親和性はそれなりにありますが、キャラクターアニメに特化したソフトなので、CAD系は他の3DCGソフトを介しない限りCADデータの使用は困難でしょう。ちなみに当工房では、こちらもShade同様バージョン8で止まっています。
主なインポート対応ファイル
3Ds、DXF、OBJ、
LWO など
主なエクスポート対応ファイル
3Ds、COLLADA、
DXF、LWO、OBJ、
VRML など

★六角大王

 CELSYS社の
六角大王スーパー6。税込み価格10,152円と言う、私が持っている3DCGソフトの中で最も安いソフトウェア!(笑)
これを3DCG業務でメインソフトとして使う人がいるとは思えませんが、そう馬鹿にしたものでもありません。1万円なのに、
LWOやOBJの読み込み&&書き出しができますし、3DSでの書き出しも可能!そして余談ですが、なんとマイホームデザイナーのCWSも書き出せる!(もっともマイホームデザイナーのソフトもデータも、仕事で使うことは99%ないと思いますが)。
 そして、六角大王スーパーは挿し絵スタジオ(※こちらも税込価格10,152円と格安!)との連携で、意外と使えるのです。挿し絵スタジオは3DCGデータを六角大王形式でしか書き出せませんが、六角大王スーパーのコンバート(エクスポート)機能を使って、他のCGソフトで使用できる3DCGオブジェクト素材として書き出すこともできる隠れた優れものなのです。つまり3D風イラスト制作としてだけでなく、3DCGモデリング素材集集としても使えるのです。まあ、6角大王をメイン3DCGソフトとしてとして使うことは、今後も絶対無いですが(笑)。
主なインポート対応ファイル
OBJ、LWO、DXF など
主なエクスポート対応ファイル
3Ds、DXF、LWO、
OBJ、VRML、CWS など


 CADデータないしCGデータの変換について、ざっくりと見てきました。これからも増えていくであろう、山ほどある3DCADファイル形式や3DCGファイル形式と付き合うのは、なかなかたいへんで、いつも頭の痛い問題です。当工房も、過去様々なフォーマットのCADデータや3DCGデータを扱ってきました。STEP,IGES、CATIA、FLT、FBX、OBJ、3DS、DXF等々。プログラムが少しずつ進歩しソフトウエアが「対応可」と謳っていても、バージョンや預かったデータによって上手く機能しないことも数多く経験してきました。個別の形式への対応は、正にケースバイケースです。毎回頭を悩ませながら変換に苦労し、修正し、アニメに組み込んで完成させる…と言うことの繰り返しです。おそらく、これからもファイル形式の数は増えることはあっても減らないと思いますので、ますます対応力が問われるようになっていくでしょう。


1.動画データのフォーマット(コーデック)について

 今から7年前に、動画のフォーマット(コーデック)について、圧縮率と画像の劣化について比較しました(⇒7年前の記事はこちら!)。高い圧縮率で、どれだけクオリティの高い画質を維持できるか、そのポイントが大事な訳です。あれから7年、色々圧縮技術も進化し、事情も変わってきたので再度新たに書きます。
 事情は変わったと言っても、「高い圧縮率でどれだけ高画質を維持できるか?」と言うことに関しては何も変わっていません。非圧縮データではすぐにハードディスクは満杯になってしまいますし、編集も重すぎますので、高画質・高圧縮がキーポイントです。
 フォーマットやコーデックについておさらいしておきましょう。よくQT(クイックタイム)やAVIと言うファイル名を聞きますが、これがフォーマットです。フォーマットは、例えるならケーキの箱です。そして、コーデックと言うのが具体的な中身で、箱の中に入れるショートケーキとかチーズケーキとかモンブランのような具体性のある物です。例えば、
Adobe・アフターエフェクツでネイティブに扱えるQTのコーデックは、アニメーション形式、モーションJPEG、非圧縮YUV8bit4:2:2を初め、35もの形式のコーデックです(※2018年現在)。AVIフォーマットでは、8種類のコーデックが選択可能です。
 更に
Adobe・メディアエンコーダーでは、さらに多くのプリセットが用意されています。とても全て書けないので割愛しますが、たいていのフォーマットや書き出しはアフターエフェクツやメディアエンコーダーで書き出せます。

主な対応フォーマットとコーデックの一例 対応フォーマットとコーデックの一例
QT:アニメーション(αチャンネル可)、フォトJPEG、
非圧縮YUV8bit4:2:2など35コーデック
AVI:非圧縮UYVY 8bit422など8コーデック
他各種シーケンス書き出しが可能
QT、AVI、WMV、DCP、H264、MPEG2、
P2ムービー、DNxHR、MXF OP1aフォーマット
と多数のコーデックなど

 たいていの場合は、編集用はQTファイル、クライアント確認用はmp4ファイルで済むのですが、それ以外にも業務で登場してくるフォーマットやコーデックが多々存在します。映像制作のプロでも、フォーマットないしコーデックを全部完璧に把握している人がいるとは到底思えません。一般の方は、「ええ!そんなに多いの!?」と思われるかもしれません。

※ビデオのファイル拡張子の一例:


 実例ですが、当工房の納品フォーマットとして業務上、過去一度も登場しなかった「FLVファイルで納品してもらえるかな?」と言うスポット的なオーダーにも対応しなければなりません。最新版のメディアエンコーダーではFLVを書き出せないので、対応すべくググりまくり、四苦八苦の末、古い古いメディアエンコーダーまで辿り着いたりする訳です。
 あと「これクライアントから受け取った動画データなんだけど開けなくて・・・雅工房で開けるかな?」と言うディレクターからの相談もあったりします。「うぅ~、なんか聞いたことないフォーマットだなぁ~」と思いつつもこっちは必死に色々調べて、(業務で怪しい無料ダウンロードのソフトを使用するのは危険なので)新たな正規品の動画コンバーターを購入する訳です。アドビのソフトで開けなくとも、
動画変換(ビデオコンバーター)・プロ(バージョン6)で開けるフォーマットも多数あります。


 最近のフォーマット事情の一つに、OS環境問題というのがあります。MACのフォーマットである
Proresが映像業界の納品フォーマットで定着しつつあります。美しい画像を保持しつつ、容量を15%以下にまで圧縮できる優れたコーデックなのです(15%は私のProres4:2:2HQ4種の動画テストの数値)。ところが、これがMACでしか扱えないのです(※2018年現在)。Windowsでは業界の定番であるアドビのソフトですら、インポートもエクスポートもできないのです。MAC側(ファイナルカット)とAdobe間のいざこざの経緯をご存知の業界人は多いと思いますが、この辺の話はバッサリ省略します。最初に権利関係の事を書きましたが、MACは取りててWindowsに何の義理もない訳で、MACの世界で閉じている訳です。
 困ったのは映像業界の人。Windows環境で仕事をしている人も数多くいる訳です。当工房も240万円もかけたG5を廃棄してからはMACは持っていないので、書き出す方法が必要なのです。Windowsにも、2種のフリーのソフトウエアをダウンロードして、手間と時間をかけてエンコードする方法はありますが、フリーなので当然サポートもないですし、そもそも忙しい業務でそんな手間暇をかけている悠長な時間はありません。Windowsで動作するMAC承認のプログラム"SCRATCH"もあるんですが、ライセンス形式で年間レンタル料が650ドル!(これを書いている日のレート$=106.7円で69,355円)。動画データの変換だけに、毎年毎年7万円も払えませんよね(汗)。



 で、今回当工房が購入したのが、
VegasPro(バージョン15)です。ビデオコンバーターではないのですが、編集や合成はAdobeの製品を使用しておりますので、もったいないですがビデオコンバーターonlyの役割として割り切った買い物です。各種Proresコーデックを書き出せます。
(2021年追記:現在はProresもアフターエフェクツで仕様出来るようになりました)。

主な対応フォーマットとコーデックの一例

 特殊なフォーマット(コーデック)はまだ色々あるので細かく言うと切りがないのですが、
アフターエフェクツ&メディアエンコーダー&ビデオコンバーター&ベガスプロの4つで、取り敢えずはたいていの業務で使用するフォーマットはカバーできます。対応できます。しかし時代が進むと共に、また新たなフォーマットやコーデックが登場してくると思いますので、臨機応変に対応していく必要があるでしょう。3DCG制作の本筋の部分ではないのですが、まあ金食い虫です。


 さて、いかがだったでしょうか。動画のフォーマットやCADデータ&CGデータなどの、デジタルデータの変換のお話し。
 業務でいつも思うことは、「せいぜいこれらの種類が2~3種類だったら良いのに…」と言うことです。CGクリエーターの本分は、デザインし、モデリングし、配置し、ライティングし、動かして画を作ることです。最近は、それ以外の技術的制約や細かなルールが増えすぎて、それらに時間もお金も割かれ過ぎている気がしますが、この世界で業務を続けていくには、地道に研究を続けそして臨機応変に対処していくしかないですね。