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VFX9:CG用全周360度HDRIの作成・シータ編
(記事記載:2019年 4月19日)
今回は、
3DCGで使用するための360度HDRI(ハイダイミナックレンジ画像)の作成方法「シータ編」
です。
「HDRIとは何ぞや?」と言うことについては、
過去のこちらの記事をお読みください
。
前々回、お金のかからない"お玉"で、HDRI作成テストをしました(
⇒お玉編はこちらをお読みください
)。
前回は、コンデジ用180度魚眼レンズを購入して、HDRI作成をテストしました(
⇒魚眼レンズ編はこちらをお読みください
)。
今回はシータで、HDRI作成を行います。
Ⅰ. いよいよRAWデータが撮影できる「シータZ-1」登場予定!
HDRI作成には、最低限必要な機材があります。
"RAWデータが撮影できるカメラ"
および
"三脚"
は必須であると過去書きました。
そこで過去2回のチャレンジは、RAW画像を撮影できるカシオのWX-ZR700を使用してきました。
しかし、コンデジで360度全天球画像撮影&作成した画像は、(趣味ならともかく)とても仕事で使用できるレベルのものではありません。
仕事で使用するレベルのものを撮影&作成するには、
①シグマのレンズ「4.5mm F2.8 EX DC CIRCULAR FISHEYE HSM」(10万~12万円前後)
②このレンズを装着できるAPS-C専用一眼デジカメボデイ(6万~十数万円)
③円形画像を方形画像に変換補正するソフト「HDR Shop」(1ライセンス21,600円)
はどうしても必要です。ざっと見積もっても
、最低20万円ほど
かかります。
ちなみに、
8Kで撮影できるプロ仕様の360度天球カメラ「
Insta360 Pro」は40万円ほど
します。論外です。
CG自体、ソフトやハードにお金がかかるので、(専門業者ならともかく)1年に数回使うかどうかも分からない機材に、大金をかけられません。
なので、360度天球HDR画像は市販のデータを購入していました。しかし市販のデータは、必ずしも制作目的に適合しないのが難点です。
やはり自前で、360度全天球HDRIを作成したいところです。
リコーのシータ(THETA)は、360度全天球画像作成に優れている事は、以前からもちろん知っていました。
けれども最大の欠点は、シータはJPEG画像撮影のみでRAW画像は撮影できず、このHDRI作成では論外なので取り上げませんでした。
そこに朗報が入りました。RAWデータを撮影できる
「シータZ-1」
が、
2019年5月下旬
に発売されるアナウンスがありました!
素子も大型の1型で、4chマイク内臓で、7Kで撮影できるとの事(動画は4K)。価格も11万円台と、現実的な価格!これは嬉しい!
そこで、Z-1発売前に、シータSCを購入して模擬HDRI撮影テストをすることにしました。
(※シータSCは、JPEG画像しか撮影できないので、あくまでZ-1購入を想定しての模擬テストです)。
また、シータを東西南北4方向に水平に保つために、
「水準器付きの自由雲台」
も購入しました。
これらの機材を使用して、いよいよHDRI模擬撮影&作成のスタートです。
Ⅱ. 撮 影
自由雲台にシータを取り付けます。東西南北4方に傾きがあってはいけないので、水準器は必須です。
水準器で全方向の水平を確認します。
三脚ですが、脚を広げ過ぎると、後々フォトショップでの三脚消しがたいへんなので、投影面積が雲台の陰に隠れる程度に広げます。
(風の強い日は、これだと倒れる可能性がありますので注意が必要です)。
この状態で、撮影したのが下記の画像です。下部に雲台がかなり大きな面積で映ってしまいます。
画像サイズがそもそも5.2Kとビッグサイズなので、それをフォトショップで丁寧に消すのがなかなかの手間で時間がかかります。
雲台や三脚の影がはっきり映っている
フォトショップで、ちまちまと雲台と三脚の影を消去及び露光を調整
なるべくフォトショップの手間のかかる作業は減らしたいですよね。
そこで、「ポールを延長したら、雲台の投影面積を縮小できるのでは?」と考えました(※下記図参照)。
当初は自作を考えていたのですが、調べたら市販されているので買いました。
改めて、延長ポールを使用して、三脚にセット。
こうして撮影したものとそうでない物を比較したのが下記の比較図です。
かなり雲台の部分が小さくなりました。三脚延長ポールはお薦めです。
さて、撮影する時には、スマホのアプリを使用します。
スマホの遠隔操作でないとEV値は変えられないし、そもそも手押しシャッターだとカメラの位置が微妙にずれてしまい同ポジにならないからです。
「THETA(シータ)」アプリをスマホにダウンロード。シータの電源をONにして、スマホのアプリも立ち上げてWiFiで接続。
アプリ画面でEV値が変更できますので、EV値をスライダーで変更してそれぞれ撮影します。
HDRI化には、EV値を変えて撮影した最低3枚のRAW画像が必要です。
3枚なら「EV-2、0、+2」、5枚なら「EV-2、-1、0、+1、+2」ですかね。もちろん7枚でも9枚でもそれ以上構いません。
下記の画像は、「EV-2、0、+2」の3枚バージョンです。
スマホでEV値を変更して撮影
EV値を変更して撮影した画像
Ⅲ. 撮影データのHDRI化
こうして撮影したRAWデータ(今回はJPEGによる疑似テスト)を、フォトショップでHDRI化します。
同じことを過去2回書いているので、大幅に簡略して書きます。
"ファイル"のメニューから、
"自動処理⇒HDR Proに統合"
を選択します。
次の画面が現れたら、必要な3枚のRAWデータを「参照」から選択し(5枚撮影なら5枚を選択)、「OK」を押します。
(※今回は試験的な模擬テストなので、JPEG画像です)
これまでの作成方法ですと、遠景画像を方形画像にするために3Dソフト(Lighewave3D)を使用していました。
しかし、シータの撮影画像は継ぎ目が分からないほど、初めから見事な方形画像を提供してくれていますので、その作業の必要性はありません。
統合されたのが、下記の画像です(※JPEG画像による例示です)。
この後の作業は、フォトショップによる「雲台消し」や「三脚の影消し」の作業です。
消込処理を終えた画像が下記の図です(※JPEG画像による例示です)。
シーン内に一切のライトを配置せず、このHDR画像だけを利用してレンダリング&画像調整したのが下記のCG画像です。
①機材費用:シータZ-1(約11万5千円/2019年5月下旬発売予定)、三脚+水準器付自由雲台+延長ポール(約2万円)
②ソフト費用:フォトショップのみ(アドビクラウド契約で現在月額5,378円/年額64,536円)
総額20万円以内で収まる「7K360度全天球HDRI」作成方法です。
従来は数十万円かかっていたことを考えると、最もコスパの高い全天球HDRI作成方法は、現時点ではこれで確定ではないでしょうか。
以上、3回に渡ってお届けしてきた「全周360度HDRI作成方法」シリーズはおしまいです、