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VFX11:様々なキャラクターアニメーションの作成方法
(記事記載:2019年10月2日/12月6日更新)
動画映像制作では、最近欠かせなくなってきた感のあるキャラクターアニメ。
ある時は物語の主人公として、ある時はプロモーションビデオの進行役として、ある時は企業や商品のシンボルとして。
今回は、キャラクターアニメの種々作成方法を概観してみましょう。(※今回は技術解説記事ではありません)。
Ⅰ. 2Dセル調アニメによる作成方法
長いアニメの歴史の中で最も、代表的なアニメーション作成方法です。
私もこの業界に入った時は(デジタル環境以前でしたので)、ロットリングでセルにトレースし、アニメックスでセルの裏から塗っていました。
それを撮影スタジオに持っていき、フィルムビデオカメラ(16mmや35mm)で一コマずつ撮影してもらっていたのです。
もっとも現在はデジタル環境なので、セルや絵の具は使われておらずPC作業ですが、作成の方法は基本的に同じです。
ベースとなる原画を描いた後、間を埋める動画を描いて、彩色と言う工程です(※実際はその前後にも色んな行程があります)。
左:原画/中央:彩色/右:背景や効果とのコンポジット
この作成方法の利点は、きめ細かい表情や動作などに優れており、また老若男女を問わず見慣れた表現であると言う点でしょう。
一方で、3次元空間での視点移動が伴う表現では、優れたベテラン原画マン&動画マンでも困難が伴います。
最近では、3DCGによる(2D画ぽく見せる)セルルックアニメの併用もよくなされています。
この制作方法は多くのスタッフが関わり、「スケジュールや品質や制作予算の管理」をシビアに見る必要があります。
制作過程が、設定や原画から撮影や編集に至るまで多くの人が絡むので、最終段階でダメ出しがあるとトラブルとなります。
制作初期段階から、そして制作進行の要所要所で、細かくOKをもらっておくような制作進行が求められます。
(※尚、現在雅工房では、この制作方法は採用しておりません。必要がある時は、全て外注作業となります)。
例:ヤスダヨーグルトCM (アニメ制作:斎藤貞夫事務所/3DCG原画パート:雅工房)
Ⅱ.3DCGベースのキャラクターアニメーション作成方法
2Dセル調アニメに続いてご紹介するのが、3DCGによるキャラクターアニメ作成です。
3DCGによるアニメが、映画やテレビで登場した当初は違和感もありましたが、最近は技術も進み見慣れてきた感があります。
作成方法は、大まかに言うと、3DCGでモデリングし、ウェイトやボーンやモーフの設定をしてアニメ化すると言うものです。
キャラクターの3DCGモデリング
ウェイトマップ、ボーンの設定やモーフの作成など
この方法の利点は、一度3Dでモデリングすればデータを何度も使える点と、上下左右どこからでも見る事ができる点です。
この点が、シーン作成の度に原画や動画を描く2Dアニメとの大きな違いですし、また3次元空間の視点移動も自由です。
ピクサーのアニメなどが代表例ですが、一方で3DCGでありながら2Dセル画のような表現で使用される例も増えています。
2D動画では優れた原画マンや動画マンが必要なのと同様に、3DCGアニメでも優れたモデラ―やアニメーターが必要です。
モーションキャプチャーで、俳優が演じた動きをコピーして、CGアニメに当てはめる技術も数多く採用されています。
3DCGアニメ制作にはそれなりの技術、知識、経験、制作時間が必要なので、制作費用やスケジュール管理も重要です。
例:ファイヤーボールドラゴン(サンプルテスト制作:2011年)
Ⅲ. 2Dイラストベースのキャラクターアニメーション作成方法
2Dセル調アニメや3DCGアニメに次いで使用されているのが、イラストをベースにして合成・編集ソフトでアニメ化する方法です。
(※いくつかのソフトウエアで作成可能ですが、当工房では、アフターエフェクツを使用しています)。
イラストを、顔や手や足などのパーツ毎に分けて、合成ソフトに呼び込んで、パーツを階層構造(ペアレント)設定してアニメ化します。
絵本などもパーツ分けして、アニメ化することができます。20年近く前に、私も某有名絵本作家の絵本をアニメ化したことがあります。
(当時は絵本を、動くアニメにすると言う前例がほぼ無かった時代ですので、作家先生がたいへん喜んでおられたとお聞きました)。
イラストのパーツ分けの例。実際の業務では、より細かくパーツ分けを行います
この作成方法の利点は、上記のセル調2Dアニメや3DCGアニメよりも、費用が安く抑えられると言う点が挙げられます。
制作期間も、上記の方法と比べると短縮できると言う点も大きな利点の一つと言えます。
一方で、表情や動きは限定された眉や目や口や手や足の動きで表現しますので、シンプルな動きの表現となります。
丁寧に原画・動画から描くセル調アニメや、3次元空間で自由に動かせる3DCGアニメ比べると、その点で大きく異なります。
例:雅工房トーク・その1(2010年制作/5話中の第1話)
Ⅳ・疑似3Dによるキャラクターアニメ制作方法 (2019年12月6日追記)
2Dのイラストから、疑似的な3DCGアニメを制作するLive2Dと言うソフトの導入を決定しました。
このソフトウェアの最大の優れた点は、時間・手間・予算のかかる3DCGを使用しなくても、3Dっぽく見せられる点です。
もう一つの利点は、イラスト原画の質感を損なわずにそのまま表現できることです。
短所としては、疑似3Dなので、真横とか後ろは見せられません。そして、パーツ毎の設定に意外と時間と手間がかかります。
しかし、Vチューバ―的な利用方法であれば、Live2Dの使用は十分メリットがあります。
例:Live2Dテスト動画 (2019年12月5日制作)
Ⅴ番外編1:一枚の写真からキャラクターアニメーションを作成する方法
ここで、ちょっと「ティーブレーク」と言う事で、一風変わったキャラクターアニメの作成方法をご案内しましょう。
クレイジー・トーク(Crazy Talk)と言うソフトウエアを使った、キャラクターアニメ制作方法です。
キャラクターを描いたりアニメを作る能力が無くても、一枚の写真やイラストから簡単にアニメーションを作る事ができます。
ただし、そのまま写真に適用すると背景まで一緒に動いてしまうので、背景を作ったり、顔の部分を切り出す手間が必要です。
そして、顔のアニメを合成ソフトでコンポジットする必要がありますので、画像処理ソフトや合成・編集ソフトは必須です。
左:元写真(Tさん提供)/右:動く部分の耳、輪郭、ヒゲ等の消し込みをフォトショップにて実行。
ネコの顔の部分だけを、それぞれフォトショップで切り抜いておく。
このソフトは簡単にリップシンクアニメが作れると言う利点があるのですが、写真ベースなので画角が固定されてしまいます。
また、このソフトで動かせるのは基本的に顔だけなので、体全体を動かす目的の動画には不向きですので使用範囲が限定されます。
例:Cats & Dogs Talk! (サンプルテスト作成:2016年/写真提供:Tさん、Lさん、Kさん)
Ⅵ・番外編2:クレイアニメ(コマ撮りアニメ)
デジタル作業と言う範疇を超えたアナログ作業になりますので、こちらも番外編です。
粘土等で作った人形を、少しずつ動かしては一コマずつ撮影してアニメを作る、いわゆる「コマ撮りアニメ」です。
人形は粘土に限らす、木製でも金属製でも樹脂製でも構わないのですが、関節や表情変更のためのパーツは必要です。
自作のクレイアニメ用人形(ウサギ、イヌ、ワニ)と種々作成素材
問題点は、少しずつ動かして一コマずつ撮影するので膨大な時間がかかること。もし倒れたりしたら、また最初から撮影です。
また、CGのようにプレビューで動きを確認できないので、最終的な動きやタイミングは職人芸的な経験と技術が必要です。
実は、私が学生の頃作成して「東映アニメーションコンクール」で受賞した作品も、紙や粘土の人形によるコマ撮りアニメでした。
「東映アニメーションコンクール」努力賞のトロフィー
CG制作を始めてからも、ベネッセのプチシアターでクレイアニメを作成したことがあります。
ウサギやワニやネコの親子が登場し、親が子どもの歯を磨くアニメでした。
以前はデジタル撮影環境が進んでいなかったので苦労しましたが、今はクレイアニメの撮影と編集も少々楽になったと思います。
例:親ワニが子ワニの歯を磨くクレイアニメ(※残念ながら音声その他の権利関係で動画はお見せできません)
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さて、いかがでしたか、今回のキャラクターの種々アニメ作成方法を概観する旅。
他にも、影絵だったり切り絵だったり砂絵だったり、アナログなアニメ制作手法にも面白い作成方法がいっぱいありますね。
私自身も、キャラクターアニメーションの更なる可能性を探っていきたいと思います。