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VFX12:物理計算3DCGの世界 (記事記載:2019年10月25日)
多くのCGは、モデリングをした後、アニメーターによって動きが作成されます。
それとは別の方法によって、CGアニメーション作成がなされる場合があります。
いわゆる物理計算による3DCGアニメーションもその一つで、CG表現には欠かせない技術の一つになっています。
実は、これらは一種類のアプリやプラグインで作成されるのでは無く、それぞれに特化したソフトウエアが用いられます。
今回は、その物理計算CGの世界を概観してみましょう。(※今回は技術解説記事ではありません)。
Ⅰ. 物の落下や摩擦の物理計算CG
物理計算CGで最もシンプルな例は、引力や摩擦に関するCGアニメでしょう。
木から落下するリンゴ、氷の上をすべる車、こう言ったアニメを、CGで表現することが可能です。
地球上での平均的な重力加速度は約9.8m/s²ですが、CGではそれ以外の値に設定することも可能です。
また、摩擦係数など様々なパラメータも自由に設定して、そのシーンを構築することが可能です。
サンプル動画:輪投げ(2013年3月15日制作)
Ⅱ.破壊の物理計算CG
建物や物体の破壊も、物理計算CGで表現することが可能です。
ビルや壁が崩壊する、ガラスやお皿が割れる、様々な破壊が考えられます。
もし、何百と言う破片に別れて砕けるようなアニメを、アニメーターが手付けで行うなら、それは地獄のような作業になります。
破壊の物理計算にはもちろん計算時間はかかりますが、手作業と比べれば遥かに速く、かつリアルな結果が得られるでしょう。
サンプル動画:ミヤビーのチャレンジ(2013年3月15日制作)
サンプル動画:ドラゴンアタック!(2011年8月19日制作)
Ⅲ. 布表現の物理計算CG
物理計算CGで、使用頻度が高い表現に「布」があります。
よく使用されるのは、風にはためく旗などがあります。私も、幾度となく作成しています。
最近は、キャラクターアニメの服や髪の毛等にも使用されています。
これらの布の物理計算は、手付けアニメではとても難しい効果を表現します。
布の厚み、柔らかさ、伸縮度合い、風や重力の影響など、複雑なパラメータの設定が行えます。
これらのパラメータを操って目的のシーンを作成するには、それなりの熟練が必要です。
サンプル動画:人物の動きに合わせた服の動き(2011年10月13日制作)
サンプル動画:布をかぶるドラゴン(2011年8月23日制作)
Ⅳ・水の物理計算CG
所謂、流体アニメと言われる物理計算CGです。
通常、パーティクルと呼ばれる粒子状のオブジェと共に使用されます。
流れ落ちる滝、パイプを流れる水、コップの水、人物に降る雨、色々なシチュエーションが考えられます。
この水表現は、水の量が増えるほど、また水の表現面積が増えるほど、大量のパーティクルが必要となり、コストがかかります。
もし、荒れ狂う大海のような表現ならば、中小のCG制作会社では難しく、ハリウッドの大作映画を作るような環境が必要です。
何百ものCPUを装備したレンダリングファームと、物理制作に特化したスタッフによるチームが必要でしょう。
サンプル動画:ウオーター・フロー(2015年6月24日制作)
Ⅴ・炎や爆発の表現
炎や煙の表現も、水の表現と同様に物理計算を用いた流体アニメです。
水の表現と同様、やはりパーティクルと共に使用されます。
炎や煙の拡散の速度や炎の温度、煙の密度など、炎や煙の設定に関する種々のパラメータがあります。
蝋燭から燃え立つ炎や煙、建物に充満していく煙と炎、戦闘シーンでの爆発など、様々なシーンに活用できます。
水のCGと同様、大量のパーティクルを用いたシーンは、物理計算やレンダリングに莫大な時間とコストがかかります。
炎や水の流体表現は、手付アニメでは不可能なリアルな表現を可能としますが、制作時間やコストを最大限考慮する必要があります。
サンプル動画:流体フロー(2016年9月27日制作)
サンプル動画:炎と煙(2016年1月17日制作)
サンプル動画:戦車の爆発(2011年9月5日制作)
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さて、いかがだったでしょうか、物理計算CGの世界。
モデリングやアニメ設定やマッピングデータの作成、ライティング技術等、3DCGにはそれぞれ特化した技術がありますが、
物理計算CGは、その中でも少々変わった3DCG技術だと思います。
他の3DCGアニメと違い、目には見えない、重力、風、速度、摩擦、拡散、温度等の数多くの要素を取り扱います。
且つそれぞれの制作において使用するソフトが異なり、特殊な知識、技術、経験が必要とされる特殊な分野と言えます。
また面白い物理計算のCGがご案内できるようになりましたら、ご紹介していきたいと思います。