トップ >CG_TIPSメニュー >現ページ
映像の画面サイズ、解像度について (記事記載:2005年4月24日)
"2011年7月24日アナログ放送終了"が決まっていますので、否が応でもデジタル&ハイビジョンの時代が到来しますね。
雅工房も、この2005年4月、ようやくハイビジョン対応のハード&ソフトの設備、第一弾を終えました(※夏に第二弾予定)。
とは言っても、それまでは4:3サイズ、スタンダード解像度、16:9ワイドスクリーンサイズ、ハイビジョン解像度などが混在します。
今回は、この悩ましくもごちゃごちゃしている映像のサイズや解像度について、簡潔に説明したいと思います。
話の混乱を避けるために、アナログやデジタルと言う言葉は、この際全部忘れてください。
サイズや解像度に、デジタルであるかアナログであるかは根本的に何の関係もありませんゆえ…。
また、ワイドスクリーン=ハイビジョンでもないので、この点も誤解なきよう。
①従来のテレビ放送の規格について
まずは従来のテレビ放送規格について触れておきたいと思います。
従来のテレビ放送規格は3種類あって、主にアメリカやカナダや日本で使われている"NTSC"、主にヨーロッパで使われている"PAL"、
ロシア、フランスその他で使われている"SECAM"があります。
SECAM方式はPAL映像再生にも対応可能なので、ここでは、NTSCとPALに絞って取り上げます。
NTSCの走査線の数は525本、一秒あたりのフレーレートは29.97フレーム(※30ではないので実時間との調整が必要になる)。
一方、PALの走査線の数は625本で、一秒あたりのフレームレートは25フレーム(※実時間と一致する)。
ざっくり大雑把に区別すると、NTSCは動き(フレームレート)が細かく、PALは画面(走査線)が精細と言うことになります。
(※ちなみに1フレームは奇数フィールドと偶数フィールドの2フィールドで成り立っていて、色情報などは2フレーム=4フィールド必要)。
次に、この日本で使用されているNTSC規格について、もっと詳しく見てみましょう。
走査線数525本と決まっていますが、同期信号やデータ部分を除いて実際に表示される走査線の数は480本前後です。
具体的には、D1規格では720×486pixel、D2規格では752×480pixelで、日常の撮影で使っているDVは720×480pixel。
ここで疑問が生ずると思いますが、4:3画面なら720×480pixelと言うのはおかしいのではないか?これでは、3:2です。
4:3ならば、720×540pixelとか、640×480pixelが正解ではないのか?
そう、NTSCは、画像のアスペクト比が1:1ではなく縦方向に圧縮されています。
D1やDVでは、アスペクト比0.9。D2では、アスペクト比0.8592です(←もっともD2規格はレアになりましたが)。
アスペクト比0.9の画像をPCモニターでフォトショップなどで開いてみると、当然、縦方向に潰れた画像に見えます。
このようにNTSCでは縦方向が圧縮されているけれど、実際の放送では圧縮がきちんとが戻されて正常な画面として見えます。
3DCGのレンダリングなどでは、このピクセルのアスペクト値をきちんと設定しないと、テレビやビデオでは潰れた画面見えます。
(※余談ですが、NTSCとは"National Television System Committee"="全米テレビジョン放送方式標準化委員会"の略です)。
②ハイビジョンの規格について
次に、ハイビジョン(HD=ハイ・ディフィニション=高解像度or高精細度)について見てみましょう。
(※ちなみに従来型は、SD=スタンダード・ディフィニション=標準解像度と言います)。
ハイビジョン規格は、国によってやや定義が異なりますが、水平走査線の数は1,125本で、16:9の画面比率です。
ただし、実際に表示される有効走査線数は1,080本です。
どれだけ高解像度化といいますと、SDが720×480pixelで34万5千6百画素(pixel)。
対するHDは、1,920×1,080pixelで207万3千6百画素(pixel)で、SDのなんと6倍もの解像度を持っています。
今は緩やかに720本以上の走査線数もHDTV規格とされていますが、私個人的は、将来的にはすべて1,080本に移行すると思っています。
(※事務所の設備も、そう言った理由で、敢えて720本を無視して、1,080本の規格に的を絞ってレコーダーなどの設備を進めています)。
HDTVの解像度は、基本的に1,920×1,080pixelで16:9です。アスペクト比は1:1、つまり正方形ピクセルです。
ただし、1,440×1,080で16:9の規格もあるので、この場合のアスペクト比は1.33333…となります。
これも3DCGレンダリングの際に、アスペクト値をきちんと入れないと潰れた映像になりますので気をつけましょう。
③HDとSDの混在に対する対応について
さて、6年後の2011年にハイビジョンに移行するとは言え、それまではHD素材とSD素材が混在する事態が続きます。
解像度だけでなく、4:3画面と16:9(ワイドスクリーン)画面と画面比率も絡んでくると、ますます分かりにくくなります。
それに対応するため、これらの素材をどう整理したら良いか、簡潔に記しましょう。
下の画像は、それぞれ4:3と16:9の画面に描かれた正円です。
これらの画像を、4:3画面のテレビ、16:9画面で見るなら何の問題もありません。
しかし、視聴者がそれぞれ逆の視聴環境だったらどう見えるでしょう?下記のようになってしまいます。
4:3用の画面をワイドスクリーンで見たら横に間延びして、16:9用の画面を従来のアナログテレビで見たら横に潰れます。
これを回避するには、それぞれのテレビにあった映像に仕立てる必要があります。
まず4:3の映像を16:9のTV画面で見るには、左右に糊代をつける必要があります。
16:9地上波デジタル放送と4:3アナログ放送を同じ撮影素材で両立させねばならない期間は、しばらくこの方法が取られるでしょう。
一方、16:9の映像を4:3のTV画面で見るには、上下に糊代をつける必要があります。
これを通称、"レターボックス"と呼びます。
レターボックス
もう一つ、NTSCのSDサイズ720×480pixelを、ワイドスクリーン用に横方法に圧縮する方法があります。
アスペクト比は1.2と潰れますが、ワイドスクリーンテレビでは正しい比率に戻ってきちんと見えます。
これを通称、スクィーズと呼びます。
スクィーズ(4:3)のデータ → ワイドスクリーン(16:9)での視聴
面倒と言えば面倒ですが、いやが応でもこのような素材の取り扱い状況の期間が続きますので、最低限この辺の理解はしておきましょう。
④映画のサイズと解像度について
余談と言いますか、おまけですが、デジタルCGデータを映画用にフィルムレコーディングする際のサイズや解像度を記しておきます。
(※これは私が数年前、イマジカの担当者に直接電話をしてお伺いした情報です)。
1.キネコ/16ミリフィルム・レコーディング
…NTSCのビデオ映像を16ミリフィルムに出力する。なのでフィルムと言っても、解像度はビデオ並み。料金は比較的安い。
2.DTM/35ミリフィルム・レコーディング
…CGのデジタル情報を、直接35ミリフィルムへレコーディングする。2通りのフォーマットがある。
Ⅰ.スタンダードサイズ(2,048×1,536pixel=4:3)
Ⅱ.ビスタサイズ(2,048×1,136pixel=1.8:1)
利点は、当然、高解像度で美しい事で、劇場やCM向けである。欠点は、費用は高価で、時間もビデオ解像度と比較し数倍かかること。
ただし、映画のデータ取り扱いについては色んな意味でデジタル化が進んでいくと思われるので、これは現在の過渡的な情報です。
(この記事もあっと言う間に古くなると思いますので)実際にCGIを映画用のデータにする際には、最新の情報を仕入れてください。
さて、ざっと映像の解像度やサイズについて記しました。映像制作者に関わる皆さん、来るべきハイビジョン時代に備えましょう。
2009年6月22日追記:
1080iや720pの"i"と"p"は、それぞれ"interlace=インターレス(組み合わせの)"、"progressive=プログレッシブ(進歩した)"。
NTSCで用いられているインターレース方式は、1画面を構成する走査線を奇数フィールドと偶数フィールドに分けて伝送する方式。
つまり1フレームは、2フィールドで構成されている。人間の目の残像効果を利用して、フィールドが2つに分かれていても自然に見える。
これは白黒テレビの伝送帯域で、カラー放送を行うために、伝送情報量を削減する目的で開発された方法。
一方、プログレッシブ方式は、走査線を一度に表示する方式。高精細な表示を行う場合に使われる事が多い。
ちらつきを避けるため、走査速度を2倍にする必要がある。
引用・参考文献
各種CG調査ノート / イマジカ聞き取り調査 / CGワールドNo.129記事より抜粋 など