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 動画(アニメ)データの圧縮について   (記事記載:2011年11月25日)
 
 さて、約1年半ぶりになりました"CG&映像のTIPS"の4回目です。今回のテーマは、動画データの圧縮についてです。
 CGを取り扱うデジタルクリエーターだけではなく、映像編集を行うディレクターなどにも必要な基礎知識TIPSです。
 
 僅か5年ぐらい前まではCGアニメの納品はテープ納品が基本でしたが、もう最近ではテープ納品はほぼ皆無です。
 当工房でもHDテープ納品のためにHD-CAMレコーダや専用ワークステーションを揃えましたが、ほとんど出番なく廃棄としました。
 テレビ局の最終納品はまだまだテープ納品が主流ですが、編集段階ではアニメ形式ファイルでのデータのやり取りがほとんどです。
 テープレス納品が増えた要因は、
 ・PC編集が主流となった昨今、キャプチャーの必要が無いテープレスの動画データの方が利便性が高く効率的である。
 ・HDレコーダや関連機器が従来のSD機器よりもずっと高価で、小規模プロダクションでは台数を揃えるための設備投資が難しい。
 と言う、主にこの2点が挙げられると思います。
 アニメーション形式ですが、色んなタイプがあります。
 ウィンドウズのwmvやDVDのmpeg、HPで使用されるFLVなども、そんな形式の一つです。
 最近は高圧縮にも関わらず高画質のフォーマットも出ていますが、編集に向かない形式も多々あります。
 数フレーム枚に中間差異を埋めている高圧縮の形式は、多くの映像情報が損なわれる事があり、あまり編集に向いていないと言えます。
 個人的にはavi形式のHQコーデック(※カノープスの国産コーデック)が気に入っていますが、主流ではないので納品には使っていません。
 現在、映像編集に最も使用されているのが、QuickTime(※以下QT)のmovファイルですので、今回はこれに絞って取り上げます。
 
 単にQTファイルと言っても、圧縮形式(※前述のコーデックの事)は多々あります。
 どの形式が良いのか私的に実験しましたので、それを簡潔にレポートします。
 adobeの動画合成ソフト"After Effects(※以下AE)"でQTの各種形式でレンダリングし、その結果を比較してみましょう。
 使用した動画は、5秒のフルHDのCGアニメです(※下記の静止画はそれを約1/35に縮小したものです)。
 
 この画像が、圧縮によってどう変化するか、検証してみましょう。
 今回使用したQTの圧縮形式は、
 ・非圧縮
 ・H264(MPEG4)
 ・DVPro
 ・JPEG2000
 ・Photo-JPRG

 の6種類です。すべての形式で、最高画質の圧縮(※100%)を選択しています。

 ①形式の差による画像の品質について
 まず動画の画像品質の比較ですが、当然"非圧縮"がベストです。画質の良い順に、並べてみます。
 画像の一部を抜き出して比較します。( )内は、5秒全体での動画のファイルサイズです。
 
 非圧縮(約900MB)
  JPEG2000(約58MB)
  PhotoJPEG(約53MB)
  H264(約26MB)
  DVPro(約18MB)

 JPEG2000やフォトJPEGは、画質の劣化が少ない事が分かります。人間の目だと判別は難しいでしょう。
 H264では、画像の色合い(※輝度)が変わっています。業務用の映像編集には、致命的かもしれません。
 DVProが最も画像の荒れが激しくノイジーで、グラデもマッハバンドが生じていて明らかに"NG"です。

 
 ②形式の差によるファイルサイズについて
 さて、次にファイルサイズについて比較しましょう。
 画質においては"非圧縮"が最も良いのは言うまでもありません。一方で、非圧縮はファイルサイズは膨大になります。
 フルHD(1,920×1,080pixel)は1フレーム辺り約6MBなので、僅か5秒で900MBです。
 30秒だと5GBを超えDVD-Rにも入らず、納品にはHDDや大容量USBメモリーやブルーレイ等が必要になります。
 長尺の動画編集を非圧縮で行おうとしたら、HDDが何テラバイトあっても足りません。
 私がHDCG制作を始めた頃、全て"非圧縮"形式で納品していました。1回の納品で、DVD-R"10枚"に達した事もあります。
 インターネットでのデータのスピーディーなやり取りやチェックが当たり前になっている昨今、これではあまりに非効率です。
 例えば、一般的に使われるインターネットの宅ファイル便やファイヤーストレージでは、非圧縮HDCG動画の送付は無理です。
 またディレクター自らがPCで編集する場合、非圧縮CGデータだと重すぎて、一々レンダリングが必要になるのも泣き所です。
 そこで圧縮率とファイルサイズのせめぎ合いとなる訳で、どの形式が良いのかの悩みどころです。
 最もサイズが小さいDV-Proは5秒で18MB(非圧縮の1/50の容量)に圧縮されますが画質の劣化が著しく"NG"。
 次にサイズが小さいのはH264の26MB(1/35)ですが、これも色合い(輝度)が変わってしまっているので"NG"。
 残りはJPEG2000とPhotoJPEGですが、それぞれ58MBと53MBで、1/16と1/17まで圧縮されています。
 高画質で、そこそこの圧縮率です。私は(若干の差ですが)より高圧縮である"PhotoJPEG"をQT圧縮の選択肢としています。
 20秒程度のHDCGならば250MB以内に収まり、インターネットでの送付も可能ですのでそれなりに重宝しています。
 (今後、より優れた圧縮形式が登場した際はそちらに乗り換えるでしょう)。
 一般論として言えることは、(当たり前ですが)圧縮率が高ければ高いほど画質は落ちて、編集向きではなくなると言えます。
 
 ③圧縮データの取り扱い留意点  
 圧縮されたデータの取り扱いには、注意すべき点があります。
 実はこれはアナログであろうとデジタルであろうと、非圧縮データでない限り避けて通れぬ問題です。
 たとえば、BETA-CAMテープの映像をVHSテープにダビングしたとします。
 お分かりのように、このBETA-CAM映像にVHS映像を編集でつないだら、画質や色合いは変化しているので当然つながりません。
 デジタルデータの場合も同様です。下記の図は、画像の圧縮を行うと具体的にどうなるかと言う実験です。
 
 元の画像 
  JPEG圧縮(50%圧縮)

 圧縮前と圧縮後では、画像が確実に劣化します。分かりにくいと思うので、拡大してみましょう。
  元画像/4倍拡大図
  圧縮画像/4倍拡大図

 拡大してみると劣化の様子がよく分かりますが、圧縮後の画像では圧縮によるブロック形状が認識できます。
 一度データを圧縮してしまうと、圧縮後データでは元データに在った情報は失われます。再圧縮保存された動画は、劣化します。
 私は納品用のCGデータが圧縮データであっても、オリジナルの非圧縮の元データや連番ファイルは必ず保存しておきます。
 (※バックアップ用のハードディスクはHD映像時代に入ってから、どんどん容量が増え続けているのが辛い所です)。
 少し話題が反れましたが、要は一旦動画を編集後に圧縮してしまうと、元の画像情報は失われると言うことです。
 ですから動画を編集で修正する場合は圧縮した再保存動画ではなく、必ず元動画データを使って修正編集すべきです。
 元動画データと圧縮された再保存動画では、画質や色合いが異なってしまい編集ではきちんとつながりません。
 ビデオカメラで撮影する動画は何らかの圧縮がかけられているので、この辺の問題はクリヤーにしておくべきです。
 非圧縮データから圧縮レンダリング保存されたCG動画データも同様です。
 
 さて、駆け足でざっと"動画"の圧縮の基本原則について触れました。
 編集ソフトによって使える圧縮コーデックが異なるので、このページの様な"変換テスト&比較"を試してみても良いでしょう。
 静止画も動画も有象無象の数多くのフォーマットが次から次へと出現していますが、"圧縮"と上手く付き合っていきましょう。

 
2018年2月20日追記:⇒この記事から7年経過した最新の動画フォーマットの記事はこちらから!