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 VFX6:CG用全周360度HDRIの作成・全周魚眼レンズ編    (記事記載:2017年 2月1日)
 
 今回は、
3DCGで使用するための360度HDRI(ハイダイミナックレンジ画像)の作成方法「全周魚眼レンズ編」です。
 「HDRIとは何ぞや?」と言うことについては、過去のこちらの記事をお読みください
 前回、お金のかからない"お玉"で、HDRI作成テストをしました(⇒お玉編はこちらをお読みください)。
 あれから早3年、今回ようやく全周360度魚眼レンズでのテストを行いました
 ソフトウェアは、今回もPhotoShopと3DCGソフト(この記事ではLightWave3D)を使用します。
 
 
Ⅰ. 撮影機材の準備
 

 HDRI作成には、最低限必要な機材があります。
"RAWデータが撮影できるカメラ"および"三脚"は必須なのは、前回と同じです。
 必ずRAW画像が撮影できるデジカメを使用します。通常RAW撮影ができるのは、一眼デジカメです。
 
気をつけなければならないのは、「HDRIを撮影できる」機能や「露光を変えて自動的に3枚撮影しHDRIを合成する」機能を謳う
 機種がいくつか存在しますが、撮影データは"JPEG"でしかなく、得られた画像は"HDRI風"でしかないのでNGです。使えません。

 
  
 
 今回も費用を抑えるため、RAW撮影ができる稀有なコンパクトデジカメ"カシオのEX-ZR700"を使用します。
 
 
 
 このカメラは、Adobeの提唱するDNG方式のRAWデータを撮影できるのです
 前回は費用を抑えるため"お玉"を使用しましたが(⇒お玉編はこちら!)、今回は
"180度全周円周魚眼レンズ"を使用します。
 お玉編でも説明しましたが、"対角180度魚眼レンズ"では、目的を達成できません。"全周180度魚眼レンズ"が必要です。
 今回は、"DIJITAL KING"のコンデジ用180度魚眼レンズ(T-03S)を使用しました。
 
  
 
 これはそのままでは、EX-700カメラで使用できません。
 レンズ取り付け用リング状のマグネットが内径17~外径21mmのSサイズで、ZR700の大きなレンズ径(横最大22mm)には足りないのです。
 モビロンで留める方法も試しましたが、無理でした。
 
 
付属リングではつかない  モビロンでも留まらない
 
 そこで、使用するためのノウハウを参考に書いておきます。ボール紙でアダプターを作成し、そこにマグネットリングを貼りました。
 頑丈に作ったので、ずれることも落ちることもありません。今回、これで撮影に挑みました。
 
  
 
 
 
Ⅱ. 撮 影
 
 機材を揃えたら撮影に入ります。野外で撮影するのであれば、風の無い日を選びましょう。
 RAWデータは露光を変えて3回撮影するので、三脚が強風で揺れたり、背景の木々がバサバサと動くのはNGです。
 また、車や自転車や人が頻繁に動いている場所や状況もNGです。露光を変える度に、撮影対象が動くとデータが使えません。
 
 
 セッティングを終えたら、撮影に入ります。HDRI撮影には、露光を変えた最低3枚のRAWデータが必要です。
 カメラの露出補正を変えて撮影します。今回は、
+2、0、-2 の3段階の露光で撮影します。
 (※RAWやHDRの画像はWebでは表示できないので、下記以降の画像は全てはJPEGによる例示です)。
 
   

 次に、この180度反対側も同じように撮影します。この際、三脚に着いた目盛りが、180度反転に有用です。
 
   
 
 
Ⅲ. 撮影データのHDRI化
 
 撮影したRAWデータを、フォトショップでHDRI化します。
 "ファイル"のメニューから、
"自動処理⇒HDR Proに統合"を選択します。
 
 
 次の画面が現れたら、必要な3枚のRAWデータを「参照」から選択し、「OK」を押します。
 
 
 
 自動的に処理が開始され、HDR画像に統合されます。同じ処理を反対側3枚にも適用し、撮影データのHDRI化は完了です。
 
 
 画像は、必ず32bitのHDRで保存します。通常の24bito以下のフォーマットで保存すると、HDRIの情報は失われます。
 
  
HDRで保存
 
 このHDRIを後で3DCGで展開するために、円形状に切り取りとり、HDRで保存します。
 
  
 
 
 
Ⅳ. 円形画像の補正作業
 
 
さて、HDRI化は完了しましたが、画像は円形のままです。これでは、CGに使えません。円形画像を、方形画像に補正します。
 (※以下の方法は、「お玉編」でも書きました。まったく同じ方法です)。
 この作業が、最大の曲者です。残念ながら(これを書いている現在)、フォトショップにはこの補正機能はありません。
 一般には、この作業に
"HDR Shop"が使用されますが、このソフトは1ライセンス辺り21,600円かかります。
 この費用も抑えるため、別の方法を考えます。これを読む人は、3DCG使用を前提にしていると思いますので3DCGソフトを使います。
 それぞれのお使いの3DCGソフトで、分割された
正方形から半球形にモーフィングするオブジェクトを作成します。
 (※私の場合は、いきなり細かい分割はつらいので8×8のグリッド正方形で作っておいて半球形に変形させ、あとで再分割をしています)。
 
 
  
 
 次は、モデリングの順序と逆で、
半球形のオブジェクトに先ほどの画像をマッピングして、正方形にモーフィングさせます。
 このモーフィング設定時のオブジェクトへの画像貼り付けや、画像のレンダリング出力も、すべてHDR画像で行います。
 
 

 
 レンダリングして、円形の方形化補正作業は完了。反対側の画像も、同じ処理を施します。
 
  
 
 残念ながら、このレンズで撮影した全周のエッジがぼけており、つまり黒味がはいってしまい、外周が暗くなってしまいます。
 180度全ての情報が使えないことが分かりました。360度外周HDRIにとっては致命的で、2枚の絵がつながりません。
 これについて誤算で、つながらないと言う意味では「お玉」以下でした(汗)。
 
 
 
 最後に無理矢理フォトショップで二つの画像を修正しながらくっつけましたが、仕事ではぜったいに使えません
 見ての通りそれぞれの外周が暗いのです。フォトショップで補正できる範囲を大きく超えています。
 
 
 
 このHDRIのライティングを使用してレンダリングしたのが、下記の画像です。
 外周の露出が暗いので、完成した画も(お玉のHDRIの時より)かなり暗いです。
 
 
 

 通常の使用目的ではありませんが、1万円の魚眼レンズが100円のお玉に負けているとのはショックでした。
 安く360度全周全周HDRIを作る夢は、これでついえました(笑)。
 方法論は確立しているので、あとは20~30万円の出費をして一眼デジカメと全周魚眼レンズを買うしかないですね(笑)。
 もしくは、今まで通り360度HDR画像は外部業者から購入するか…です。